役者・歌手・声優・アナウンサーなど、『発声』を基礎とする練習を必要不可欠としている職業は多くあります。そして発声練習をする目的を大きく分けると『声量、声質』の他に重要な『滑舌』のレベルアップがあります。
滑舌が良い方のスピーチや話、そして歌には、周囲にとって「非常に聞き取りやすい」「内容が理解しやすい」「会話のキャッチボールがしやすい」「歌詞にも抑揚だけでなくキレがある」といった多くのメリットを生みます。
滑舌に自信がない方や周囲から滑舌が悪いと指摘された経験のある方にとって、滑舌を良くすることは、あなたの印象そのものも向上させる効果があるといっても過言ではありません。とはいえ、「生まれ持った滑舌をそんな簡単に良くするなんて無理では…?」と思っている方も多いでしょう。
しかし安心してください。滑舌をアップさせる発声練習法はきちんと存在しています。そこで今回は、どんなジャンルの職業でも通用する”滑舌を良くするための発声練習法”を分かりやすくご紹介します。『あいうえおあお』の正しい発声練習法をマスターして理想の滑舌を手に入れましょう♪
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「もう一回言って?」と言われた経験がある方は滑舌を見直す必要がある
誰かと話していて「え?もう一回言って」と言われたことはありませんか?もし経験があるのであれば、それは滑舌が原因で相手に上手く伝わらなかった可能性があるかもしれません。
また、厳しい現実にはなりますが、就職活動時での面接時やオーディションなどの審査を受ける場において「もう一回させてほしい!」と伝えても、残念ながらやり直しをさせてくれるケースはほとんど無いと言っていいでしょう。
滑舌が悪く、自分の言葉が相手に上手く伝わらなかった場合、それはそのまま貴方の評価として残ってしまうことも大いにあるのです。例えばそれはアナウンサーという職業を例に挙げると分かりやすいかもしれません。
アナウンサーだけでなく、記者の人たちも滑舌重要だよね。
現場の○○記者~って中継繋いだとき、滑舌悪い人よく見る。聞き取りづらいので何とかして欲しいなぁ。— ♥AYA♥G&L♥ (@mura_0817) 2016年10月17日
ニュースを読み上げる際にアナウンサーの滑舌が悪ければ、視聴者には正しい内容を伝えることが出来ません。基本的に収録では無く生放送の場でニュースを読み上げることになるため、一度のミスが今後の仕事に関わることになるのです。極論に思うかもしれませんが、この程度は普段から意識しておかなければ業界で生き残れないでしょう。
その為、アナウンサーは滑舌をしっかり保つための発声練習を日々絶対に欠かさないのです。「もう一回!」と言わせないほどクリアな滑舌を手に入れることは、オーディションや声を使う職業は元より、どのジャンルにおいても最重要課題と言え、確実に役立つといって良いでしょう。
現在そこまで滑舌に悩んでいない方も、滑舌は年齢とともに気付かない内に低下していくと言われています。滑舌の良さを維持し続けるためにも、この機会に滑舌トレーニングを取り入れてみましょう。
発声練習前のウォーミングアップは重要!
発声練習をする上で『口周りのウォーミングアップ』は必要不可欠です。口の周りはほとんどが筋肉で構成され、滑舌の機能と言える舌も筋肉で出来ています。効果を出したいと思うなら絶対的にウォーミングアップはすべきです。
また滑舌で使う顔の部位は、顎・唇・舌の3点とされています。つまりこの3点を強化できれば自然と滑舌は良くなり、発語もしっかりクリアなものになるということが言えるでしょう。
発声練習をウォーミングアップ無しで行う方はハッキリ言って恐いもの知らずでしょう。大袈裟に聞こえるように思う方もいるかもしれませんが、これにはきちんとした理由があるのです。
普段発声練習を行っていない方の口の筋肉は、当然ですが硬い筋肉のままです。口も日常の会話や食事の時くらいの使用頻度であれば、まだあまり激しく動かすことに慣れていないと言えるレベルです。
このようなまだ何も整っていない状態でいきなり発声練習をしてしまうと、「舌を噛んでしまった」「口の中を噛んで出血した」「顎が外れてしまった」といった怪我をしてしまう可能性も。そんな日常生活に支障をきたすような怪我をしないために、発声練習前にしておくべき大切なことがあります。
それはつまり、動かす動作がメインとなる滑舌の発声練習前にはウォーミングアップが不可欠であるということ。そこで、まずは表情筋と口周りの筋肉に効果的なウォーミングアップ法を2種類紹介します。どちらか実践しやすい方法だけでも構いません。ウォーミングアップとして積極的に取り入れていきましょう。
発声練習前のウォーミングアップ法①『あいうえお体操』
まずは口で母音である『あ・い・う・え・お』の形を作る動作を繰り返し行い、徐々に表情筋と口周りの筋肉をほぐします。
- 「あ」は表情筋全体を動かすことを意識して、大きな口の動作を行います。
- 「い」と「え」の口の動作の時は、口と頬の筋肉を横に意識して動作を行います。
- 「う」と「お」の口の動作の時は、しっかりと口を前へ突き出すように意識して動作を行います。
口を全体的に大きく開けたり、横に引いたり、すぼめたりする動作を繰り返し3ターン程度行うことで、少しづつ表情筋と口周りの筋肉がほぐれて発語がしやすくなるのです。
このウォーミングアップの動作を行っている時は、声を出しても出さなくてもどちらでも構いません。何かの片手間で簡単に実践できるので非常にオススメなウォーミングアップ法の1つです。
発声練習前のウォーミングアップ法②『顔のマッサージとタオルケア』
おでこ→目周り→頬→口周り→顎の順で、上に顔の肉を引き上げるようにマッサージをします。このマッサージをすることで外部刺激により血流がアップし、表情筋と口周りの筋肉がほぐれやすくなると言われています。
☆ポイント☆
プロのレッスンでも行われている発声練習前のケアになりますが、熱めの温度のお湯で絞ったおしぼりやタオルがあれば、口周りに充てて少し温まるように置くのも良いでしょう。
筋肉は冷えていると中々ほぐれません。外部から温めることで一層ほぐれやすくなるので、時間がある方は是非試してみる価値がありますよ♪
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滑舌を良くするための発声練習法【実践編】
滑舌が悪いといっても、55音全ての音の滑舌が悪いという方は非常に少ないとされています。分かりやすくいうと、まずは55音全て発語してみてどの音が発音がしづらいのか、または聞こえづらいのかをしっかり把握する必要があります。
インターネットには滑舌のアップ方法と検索すれば山のように検索結果が出るわけですが、どの練習法が効果的かは実際にやってみないと分かりません。また、55音全ての滑舌練習となれば、全ての音の滑舌練習はできるものの、やはり時間がかかってしまって大変でしょう。
一番効果的で効率良く滑舌を良くしたいのであれば、まずは自分の声を録音して聴くことです。恥ずかしいと思う方もいるかも知れませんが、実は一番この方法が効果的で効率が良いのです。
自分が発言している言葉がどのように周りに聞こえているかを知ることはとても大切なことです。自分の声を知ることで練習前と練習後の違いを認識することも出来ます。
どの音が発語しづらいのかを自覚することが、最も効率の良い滑舌アップ方法に繋がります。滑舌には歯並び・骨格・舌の長短などが影響されることもありますが、上手く発語するコツを掴むことが出来れば滑舌は断然良くなります。
録音して聞いた音で不安定な音があれば、その不安定な音をピンポイントで練習することも良いでしょう。とにかく滑舌を良くしていくことをオススメします。
発声練習法その①『舌の筋肉の強化トレーニング』
- 口を閉じて、舌を下唇・歯茎の間に入れます。
- 舌の先に力を入れて左右にゆっくり歯茎に沿えたまま移動させます。右から左にに力を抜かずに行います。
- そのまま上唇と歯茎の間に舌を移動させます。
- 同じ動作を左右にゆっくり往復して行います。
簡単な動作ではありますが、実はこの動作は普段使うことのない、舌の筋力をしっかり使うので大変オススメです。舌の動作がしっかりしてくると発音もクリアになります。
発声練習その②『舌のストレッチ運動』
- お腹から息をゆっくり吐きだしながら、舌を限界だと思うまで真っすぐ突き出します。
- 次に下向きに顎先に舌をつけるイメージで伸ばします。
- 息を吸いながら、舌を内側向きにカーペットのようにたたむような意識をしてカールさせます。
1~3の動作を最低3回くらい繰り返します。練習しはじめの頃は、舌の根元(舌根)に力が入るのが分かり、練習を終えると痛みを感じることでしょう。
日常生活では舌をここまで動かす動作になれていないので、特にほぐすことを意識して練習さえすれば、無理ない程度で構いません。
舌が柔らかくほぐれることにより、滑かな発音や発語が出来るようになります。逆に舌が硬いと上手く動作できず、滑舌が悪い方の多くはほぐすことで解消できることもあります。
発声練習その③『発語トレーニング』
- 肩幅に足を開いて立ち、背中を真っすぐ姿勢を正して以下の口の形をイメージしながら発声してみましょう。
- 「あ」→縦に大きく開いて
- 「い」→口を横に引いて笑顔で
- 「う」→頬から唇をすぼめるように
- 「え」→「あ」で開いた口を横に開くようなイメージ
- 「お」→「う」の口より少し開いて
このイメージで、「あ・え・い・う・え・お・あ・お」と発語するのが基本動作です。この動作を3回繰り返します。「簡単すぎる」と思ったあなた!実はこの発語練習はとても重要なのです!
アナウンサーの発声練習でよく聞かれる「あ・え・い・う・え・お・あ・お」の練習法ですが、55音あるカナの中で母音である「あいうえお」の発音がしっかり出来ていなければ、子音にも大きく影響が出るのです。
そのため、アナウンサーのようなハッキリと文章を読まなければいけない職業では母音の発語トレーニングが重要とされ、どれだけキャリアを積んだベテランアナウンサーであっても、母音トレーニングは絶対に練習メニューから外されることはないと言われています。
発声練習その④『ポイントトレーニング』
自分で55音を発語し、それを録音して聴くことの大切さについて紹介しましたが、実際にどの音が発音しづらいのか理解して、もしも不安な音があれば繰り返し練習することが大切です。
- 『あ行』→「あいあうあえあお いあいういえいお うあういうえうお えあえいえうえお」
- 『か行』→「かいかうかえかお きあきうきえきお くあくいくえくお けあけいけうけお」
- 『さ行』→「さいさうさえさお しあしうしえしお すあすいすえすお せあせいせうせお」
- 『た行』→「たいたうたえたお ちあちうちえちお つあついつえつお てあていてうてお」
- 『な行』→「ないなうなえなお にあにうにえにお ねあねいねうねお ぬあぬいぬえぬお」
- 『は行』→「はいはうはえはお ひあひうひえひお ふあふいふえふお へあへいへうへお」
- 『ま行』→「まいまうまえまお みあみうみえみお むあむいむえむお めあめいめうめお」
- 『ら行』→「らいらうらえらお りありうりえりお るあるいるえるお れあれいれうれお」
- 『わ行』→「わいわうわえわお こあこいこうこえ そあそいそうそえ とあといとうとえ」
母音である「あいうえお」を複合させた発音を繰り返し行うことによって舌の動きが機敏になり、聞こえやすい滑舌で発音出来るようになります。練習する際はただ読み上げるのではなく、母音の口の動きをしっかりと意識しましょう。
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⇒発声練習になる文章とオーディションに合格できる美声の作り方
発声練習その⑤『早口言葉5選で実践練習』
- 「青い家をおいおい売る 上えへ青い葵をおいおい植える」
- うたうたいが歌うたいにきて、歌うたえというが うたうたいが歌うだけ 歌うたえれば 歌うたうが、うたうたいだけ 歌うたえぬから歌うたわぬ」
- 「鼓、小鼓、小鼓、鼓包み、小包、小包、包み」
- 「抜きにくい釘、引き抜きにくい釘 釘抜きで抜く、釘」
- 「新設診察室視察 最新式写真撮影室」
「あ・い・う・え・お」の発語だけでなく、このような文章を早口で読めるようになれば滑舌もかなりレベルアップしてきている証でしょう。
早口言葉を練習することにより、口・舌・頬・顎の部位が機敏な動作をしなければならないため、最初は慣れていない方が噛んでしまうのも無理はありません。
繰り返し練習することで機敏な動作に口も慣れていき、綺麗な発声で噛むことなく発声が可能になりますので、「噛んでしまうから…」と諦めずに繰り返し2~3回から練習していきましょう。
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⇒【発声練習の方法】高齢者のリハビリにもなる例題も分かりやすく紹介
滑舌が悪いことは損。改善するなら今!!
というわけで、今回は滑舌を良くするための発声練習について紹介しました。冒頭に紹介したように、滑舌が悪くて得をすることはほぼ無いといって良いでしょう。
あなたの話を聞いている相手が「今なんて言ったの?」と思っても、1度ならともかく何度も続いてしまうと、聞き返すことすら億劫になってしまうこともあるのです。
それほど滑舌はオーディションの場や声を使う職業などの場面はもちろん、コミュニケーションをとる上でも大変重要なものです。もし滑舌に不安があるのであれば、今すぐにでも発声練習を行うことをオススメします。滑舌良く、人前でハキハキと話すことが出来ることで損をすることは全くありません。
また、即効性を求めるのであれば、プロの専門家の滑舌・発声をメインとしたレッスンを受けることを推奨します。個人で発音や発声、そして早口言葉の練習をすることは大切ですし効果的ではありますが、個人では限界があるもので、滑舌が悪い原因を見出すにはやはり専門家には敵いません。
滑舌が悪い原因によってどのような改善法が適しているのかも、専門家にかかれば余計な回り道をしなくて済みます。もし即効性及び舌や口周りのトレーニングだけでは不安が解消されないという方は、迷わず専門家に適したレッスンが無いか相談してみましょう。
滑舌が良くなれば日常生活はもちろんのこと、どんなジャンルの職業でも役立ち、更には歌も上手くなるなどメリットだらけです。確実にあなたの魅力や印象もアップすること間違い無しと言えるでしょう。早速発声練習に取り入れて魅力的な美声を手に入れましょう♪
【発声練習】